KITTKAで扱うセラピーの概要

従来の「セラピーに人を合わせる」発想ではなく、現在のこころと身体の状態や生活状況を丁寧にうかがい、心理的な見立てをもとに、用いる方法・頻度・ペース・順番を調整しながら進めるオーダーメイドのセラピーを提供します。


脳幹にアプローチする最先端のセラピー

Deep Brain Reorienting(DBR) 


こんな方に

過去の出来事を詳しく話すことに抵抗がありつつも、突然よみがえるショック反応や身体の強いこわばり・緊張、もしくは解離にお困りの方。言語習得前のトラウマに悩まされている可能性のある方も対象です。


DBRは脳幹に働きかける最先端のトラウマ治療です。Frank Corrigan博士により脳科学・心理学の知見をベースに開発されRuth Lanius博士らの臨床試験でエビデンスが認められた心理療法です。その結果が意味するのは、辛い記憶に不意に襲われる感覚が和らぎ、安心して過ごせる穏やかな時間があなたの日常に戻ってくる可能性があるということです。

トラウマや慢性的なストレスに関連する自動的な防御反応を、身体感覚の手がかりから安全に再編成していくボトムアップのセラピーであるため衝撃的な出来事を話す必要がありません。

DBRでは、出来事に直面した瞬間に起こる「定位反応(頭や視線が刺激へ向く過程)」「緊張などの微細な身体感覚」「それに続く感情の波」をセラピストのサポートのもと段階的に体験、解放します。からだに表れるサインにやさしくゆっくりと注意を向けることで、記憶と感情の処理が自然な流れに戻るようサポートします。

特徴

  • 非侵襲的で安全:詳細な語りよりも身体感覚のモニタリングを重視し、過度な再体験を避ける設計。
  • 根本的な再編成:表層の思考だけでなく、脳・神経系のレベルで反応パターンの更新を促します。
  • 最近のストレス場面を入り口に、無意識に深く根ざした記憶や、言葉になる前の愛着の問題へアプローチし心身の平穏を取り戻すお手伝いをします。


 対象となる課題の例:事故・喪失体験、対人ストレス、慢性的な不安や緊張、自己批判の強さ、身体化された不快感など。 セッションでは、いま感じられる安全とつながりを土台に、からだの微細な合図を尊重しながら、回復の道筋を一緒に見つけていきます。

※複雑性のトラウマをお持ちの方には、強いご不安や恐怖感が軽減された段階で他のアプローチとの併用もご提案しています。クライアント様の神経系の許容度に合わせ、最適な介入を選ぶことが大切だと考えています

以下は専門家/研究者向けの情報です。ご興味のある方だけどうぞ。
DBRのエビデンス論文 

  • RCT(PTSD): Kearney BE, Corrigan FM, Frewen PA, et al. A randomized controlled trial of Deep Brain Reorienting: a neuroscientifically guided treatment for post-traumatic stress disorder. European Journal of Psychotraumatology. 2023;14(2):2240691.​⁠​⁠

理論・総説(書籍):

  •  Corrigan F, Young H, Christie-Sands J. Deep Brain Reorienting: Understanding the Neuroscience of Trauma, Attachment Wounding, and DBR Psychotherapy. Routledge; 2024. doi:10.4324/9781003431695. 
  • 「紹介サイト: Deep Brain Reorienting 公式 ↗
  • Laniusは一般向け記事で、DBRが「ショックを直接扱う数少ない治療」であり、認知療法の前段で感情強度を和らげ得ると解説しています。【Psychology Today】 ↗

【Ruth Lanius公式のわかりやすい解説】 ↗

神経系から整える

Somatic Experiencing(SE)


 こんな方に
頭では「大丈夫」と分かっていても、からだの緊張やフリーズ状態、慢性的な不安・睡眠のしづらさなど神経系の「過敏さ」もしくは「切り離し」に困っている方に向いています。


SEソマティック・エクスペリエンシングは、ショックな出来事によって神経系に残った過覚醒(神経が張り詰めた状態)やフリーズ反応を、身体感覚へのやさしい気づきと段階的な調整でほどいていく『心と身体をつなぐセラピー』です。

セッションでは、安全な土台づくり(グラウンディング・資源化)を行いながら、筋緊張、呼吸、姿勢、微細な内受容感覚(体の内側の感覚)などの「からだの合図」に注意を向け、過度な再体験を避けつつ、身体に閉じ込められた凍りつきの反応や未完了の衝動が解放される事をサポートします。安心に戻れる状態を確保しながら、少量の違和感に触れては戻る――を繰り返すことで、自己調整力が育ち、現在の安全感と選択可能性が戻っていきます。

 対象は、事故・災害・医療トラウマ・対人ストレス・愛着トラウマ、慢性的な不安や緊張、身体化された不快感、睡眠・集中の困難など。単独での実施に加え、他の心理療法と併用して、負荷を低減しながら処理を支える補助的アプローチとしても有用です。

Somatic Experiencingに関する論文 

  • RCT(PTSD): Brom D, Stokar YN, Lawi C, et al. Somatic Experiencing for posttraumatic stress disorder: A randomized controlled outcome study.J Trauma Stress
  • RCT(慢性腰痛+併存PTSD): Andersen TE, Lahav Y, Ellegaard H, Manniche C. A randomized controlled trial of brief Somatic Experiencing for chronic low back pain and comorbid PTSD symptoms. European Journal of Psychotraumatology. 2017;8(1):1331108. doi:10.1080/20008198.2017.1331108 

書籍

補足

トラウマ研究第一人者のvan der Kolk博士が自身の著書で紹介しています。

ベッセル・ヴァン・デア・コーク(2016)『身体はトラウマを記録する――脳・心・体のつながりと回復のための手法』金剛出版。単行本(紙版): Amazon.co.jp: 身体はトラウマを記録する――脳・心・体のつながりと回復のための手法 ↗ 

PTSD,心の傷に対するWHO推奨のセラピー

EMDR

こんな方に
特定の出来事や場面がフラッシュバックしたり、関連する状況を強く避けてしまうなど、トラウマ記憶に結びついたつらさを安全に和らげたい方に向いています。


EMDR(眼球運動による脱感作と再処理)は、トラウマ体験に結びついた強い苦痛を和らげ、記憶の処理を健全な形へ再編成する心理療法です。世界保健機関(WHO)をはじめ複数の国際ガイドラインで、PTSDに対して安全性が高く負荷の少ない治療として推奨されています。

EMDRの進め方
セッションでは、まず安全な関係づくりと安定化(資源化)を行います。そのうえで、特定の記憶に穏やかに注意を向けながら、左右交互刺激(眼球運動・タッピング・音刺激など)を用いて処理を進めます。これにより停滞していた記憶ネットワークが動き出し、否定的な信念の修正や身体反応の鎮静、現在の状況に沿った意味づけが生じやすくなります。
適用領域
 EMDRはPTSDに加え、不安・抑うつ、喪失への反応、対人ストレス、事故・災害後の反応、医療・産科でのトラウマなどに適用可能です。再活性化の負荷を最小限に保ちつつ、効果的な再処理を目指します。

安全性への配慮
 強い解離や複数のトラウマをお持ちの場合には、段階的な安定化と丁寧なケース概念化を行いながら個々の状態に合わせて計画・実施します。

体系的レビュー・ガイドライン 

  • 市井雅哉. EMDR: PTSDに効果的な心理療法. 心身医学. 2012;52(9):819-827. jstage.jst.go.jp/1i ↗Shapiro, F. Eye Movement Desensitization and Reprocessing (EMDR) Therapy: Basic Principles, Protocols, and Procedures. 3rd ed. New York: Guilford Press; 2018.
  • 国際的には、WHO、ISTSS、VA/DoDなどが成人PTSDの第一選択にEMDRを推奨
  • WHO. Guidelines for the management of conditions specifically related to stress. Geneva: World Health Organization; 2013. (EMDR推奨)

National Institute for Health and Care Excellence. PTSD: NG116. London: NICE; 2018. (EMDR推奨)

ドキュメンタリー

『トラウマからの解放』https://www.dailymotion.com/video/x14tcd Dailymotion ↗

体験記

  • Prince Harry: Apple TV+のドキュシリーズで不安への対処にEMDRを実演し、母の死のトラウマ処理に役立ったと発言。その一部は Vimeo 上で視聴できます。動画内では眼球運動の代わりにバタフライハグが用いられています https://vimeo.com/673880676
  • Miley Cyrus: 英国版Vogueのインタビューで、過去のトラウマやパンデミック後の不安の回復に「とても助けられた」と評価。British Vogue ↗
  • Sandra Bullock: 侵入被害後の恐怖の処理にEMDRを活用したと説明 Mental Climb ↗ / SCMP ↗


からだの感覚に寄り添い、やさしく整える

ボディコネクトセラピー

こんな方に
言葉にしにくいモヤモヤや身体症状としてあらわれるストレスを、からだの感覚を手がかりにやさしく整えたい方に向いています。

ボディコネクトセラピー(BCT)は、トラウマを「こころの問題」だけでなく、情報とエネルギーとして脳と身体の両方に残っている体験としてとらえる身体志向(ボトムアップ)の心理療法です。

セッションでは、身体感覚にやさしく注意を向けながら、脳と身体のつながりを回復させていきます。そのうえで、ペンデュレーション、タッピング、眼球運動、アファーメーション、カードなど様々な方法を用いて、比較的穏やかにトラウマエネルギーにアプローチしていきます。

近年の神経科学や身体心理学の知見を背景に理論づけられており、次のような特徴があるとされます。

  • フラッシュバックなどの強い活性化が起こりにくい構造になっている
  • 解離を起こしにくいよう、安全性に配慮された手順が組まれている




書籍

漫画家の三森さんがトラウマ治療の体験記を描いてくださいました(個人によって体験は変わります)。

『いいかげんに生きづらさを終わらせたい』三森みさ

Amazon.co.jp: いいかげんに生きづらさを終わらせたい(Kindle版) ↗

愛着の傷を癒す

ホログラフィートーク

こんな方に
幼少期の体験や愛着の課題が今の人間関係や自己評価に影響していると感じ、その「根っこ」に穏やかに触れていきたい方に向いています。


ホログラフィートークは、感情や身体症状を“問題のサイン”ではなく“解決の手がかり”として扱い、クライエント自身の力で癒しを進めるための心理療法です。セラピストは安全な枠組みを整えながら、軽催眠下のトランスワークの技法を用いて、以下の流れを支援します。

  • 起源の探索:今の苦しさが生まれた過去の場面や関係に優しく近づく
  • 解決の促進:強い反応を起こしにくい方法で体験を再整理し、再選択する
  • 未来の資源化:新しい視点や行動、セルフケアの“内的資源”を育てる


対象は、幼少期のトラウマ、PTSD/複雑性PTSD、愛着に関わる長期的な課題など。セッションの中で、あなたの内にある知恵と回復力が働き始めるようサポートします。


書籍・文献

紹介サイト


パーツワークセラピー・深く自分を知り、葛藤を味方につける

IFS:Internal family systems(内的家族システム)

こんな方に
「頑張りすぎる自分」「すぐに責めてしまう自分」など内側の複数の“パーツ”同士の葛藤に疲れ、自分との関係性を深く整えたい方に向いています。


IFSは、心を構成するセルフと複数のパーツ(サブパーソナリティ)がつくる「内なる家族」を理解し、調和へと導く心理療法モデルです。防衛的に振る舞うパーツも、傷つきを抱えるパーツも、すべてに肯定的な意図があります。中心にある穏やかで賢明なセルフがリーダーシップを発揮することで、内的な安全と回復力が育まれます。

IFSの特徴 

  • 自己への思いやり: 内側の声や感情に、批判ではなく好奇心と尊重で向き合います。
  • 安全な進め方: 急がず、パーツとの信頼関係を築きながらワークを進めます。
  • 擬人化による洞察: パーツを人としてイメージし、役割・意図・ニーズを具体的に理解します。



パーツの擬人化 

心の中のサブパーソナリティを、人間のように理解・対話可能な存在として扱います。目的は、各パーツの役割と意図(保護、警戒、救済など)を尊重し、葛藤を減らしてセルフのリーダーシップが働く状態を整えることです。

  • 管理者(Managers):先回りして秩序を保ち、失敗や批判を避ける。
  • 消火係(Firefighters):苦痛が噴き出した時、衝動的対処で鎮火(過食、物質、過労など)。
  • 追放されたパーツ(Exiles):トラウマ由来の痛みや恥、恐れを抱え、普段は奥に閉じ込められている。


例えば「完璧主義の管理者」「衝動的な消火係」「傷ついた幼い子」といった姿をイメージすると、対話とケアの関係性が築きやすくなります。




論文

  • RCT(2013):リウマチ患者に対するIFS介入は、痛み・抑うつ・機能の改善とセルフ・コンパッションの向上を示しました。

Shadick NA, Sowell NF, et al. A randomized controlled trial of an internal family systems-based psychotherapeutic intervention on outcomes in rheumatoid arthritis. J Rheumatol. 2013;40(11):1831–1841.

  • 社会的関心 

海外では著名人にも支持が広がり、歌手アラニス・モリセットの体験談や、女優グウィネス・パルトローのPodcastでの支持表明が話題となっています。
紹介サイト公式

最高のパフォーマンスを実現するために

ブレインスポッティング

こんな方に
スポーツや音楽、演技等のパフォーマンス場面や対人場面で突然身体が固まる、過去の経験がブレーキになっている感覚があり、それを身体レベルから解放したい方に向いています。

ブレインスポッティング(Brainspotting)は、視野上の特定ポイント(ブレインスポット)と身体感覚への丁寧な注意を手がかりに、つらい記憶や反応の処理を促す心理療法です。EMDRやソマティックなアプローチの知見を背景に、ことばだけでは扱いにくい「からだの反応」と記憶の結びつきに働きかけます。

特徴

  • 安全な関係とペースを大切に、過剰な曝露を避けながら“少量ずつ”進めます
  • 眼位(視線の位置)と身体のサインを指標に、処理に適したポイントを見つけます

適応の目安

  • PTSD/複雑性PTSDに伴う再体験・過覚醒・回避
  • 不安・パニック、慢性的な緊張や身体症状の一部
  • 人間関係やパフォーマンスの妨げになる“からだの固まり”や過剰反応


  • 邦訳入門書: 『ブレインスポッティング入門 ― トラウマに素早く、効果的に働きかける、視野を活用した革新的心理療法』デイビッド・グランド 著/藤本昌樹 監訳(星和書店, 2017)。
  • パフォーマンス応用: 『最高のパフォーマンスを実現する! ブレインスポッティング・スポーツワーク ― トラウマ克服の心理療法』アラン・ゴールドバーグ/デビッド・グランド(BABジャパン, 2016)。Amazon商品ページ ↗


フラッシュバックへのエビデンスを持つセラピー

TSプロトコール

こんな方に
重いトラウマに伴うフラッシュバックや身体的不快感が繰り返し起こり、短時間・低負荷の方法で症状軽減の一歩を試みたい方に向いています。


TSプロトコールはフラッシュバック軽減に焦点を当てた簡易型トラウマ処理技法です。国内のランダム化比較試験で短時間の介入(1回5〜10分程度、4〜6回)により症状軽減の有望な結果が示されています。実施に先立ち、医師の管理下でTS処方(向精神薬の極少量+漢方併用)を受け、左右交互刺激と肩呼吸による深呼吸を用いて、身体的不快感を下から上に“抜く”手順を行います。安全性に配慮しつつ、重いトラウマによるフラッシュバックの軽減を目指します。

T Sプロトコールに関する論文

  • TS プロトコールによる複雑性 PTSD 患者への RCT による治療研究

杉山登志郎 1)堀田洋 2)涌澤圭介 3)和田浩平 4)鈴木太 1)森本武士 1)椎野智子 5)友田明美 1)https://www.my-kokoro.jp/publish/books/research-aid-paper/vol56_2020/pdf/mykokoro_research-aid_paper_56_05.pdf

書籍

発達障害、特性による生きづらさへのサポート

生まれ持った発達特性により、日々の暮らしや人間関係が「生きづらい」と感じられることがあります。特性や発達の偏りがある場合、神経系が刺激に圧倒されやすく、適切な手当てをしないと心の傷として深まりやすいことも知られています。さらに、HSP(敏感な気質)やHSS(刺激追求型)の傾向が重なると、音・光・人の気配に疲れやすい一方で、好奇心や新しい体験への意欲が強く、内外のバランスが崩れやすくなることがあります。関係性の難しさや生活上の敏感さに丁寧に向き合い、必要に応じて対人スキルの練習を行いながら、いまの環境で使える具体的な工夫やステップをご提案し、安心して試せる形で伴走します。

 


その他
必要な方には家族療法、アートセラピー、USPT、KALGO、認知行動療法、REBT、マインドフルネストレーニングなどを柔軟に提供します。

Kittkaでお勧めしているセルフケア(セッションの合間にご自宅でできる心のケア)

書籍

『不安・イライラがスッと消え去る「安心のタネ」の育て方』

迷走神経と社会的安全の役割がわかりやすい言葉で説明されています。
日常ストレスやトラウマで乱れがちな自律神経を整え、「安全の感覚」を体に根づかせるための実践ワーク集で、とても読みやすく挿絵にも癒やされます。理論の背景はポリヴェーガル理論で、短時間でできる呼吸・感覚の錨づけ・社会的つながりの活性化など“マイクロ介入”が47項目で示されます。安定化のホームワークとして活用しやすく、過覚醒・低覚醒双方への調整のヒントが得られるところがお勧めです。

『今日1日のアファメーション ― 自分を愛する365日(西尾和美)』
育った家庭で「自分らしさ」を抑えてきた感覚がある方、常に気を遣ってきた方、傷つく体験が多かった方におすすめのセルフケア本です。1日1ページの短い肯定的メッセージが、自己への思いやりと自己肯定感を穏やかに育みます。繰り返し読むほど「自分を大切にする」とは何か、何が健全な境界や選択かが、日々の生活の中で輪郭を帯びていきます。

         心の傷を癒すカウンセリング366日: 今日一日のアファメーション (ほぼ同じ内容の文庫

ヴァンデア・コーク博士もお勧めのセルフケア〜優しく動いてみる

フェルデンクライス・メソッド 

ゆっくりとした心地よい動きで身体の「気づき」を育て、最小限の力で動く方法を再学習するアプローチです。習慣化した緊張をほどき、動きの質を整え、ストレスをやわらげます。短時間でも効果的なので、朝や休憩に10–20分、痛みのない範囲で小さく・ゆっくり・やさしく動くことを基本にしてください。寝転がるものと座位でできるものがあります。

フェルデンクライスジャパンさまが無料音源をホームページで公開されています。

  • The Feldenkrais Japan — https://feldenkrais.jp/about/trial.html


アロマセラピー

アロマセラピーは、植物から抽出された「精油(エッセンシャルオイル)」の香りを用いて、自律神経のバランスを整え、ストレス緩和やリラクゼーションを促す自然療法です。

五感の中で唯一脳に直接伝わるのが「嗅覚」です。
香りの分子を嗅覚がキャッチすると、感情や本能をつかさどる大脳辺縁系や、自律神経系をつかさどる視床下部にその情報が伝わり、体温や睡眠、ホルモン分泌、免疫機能などのバランスを整える働きがあるとされ、気分の安定や睡眠の質の向上にもつながることが報告されています。

何もする気が起きないような低覚醒状態が続くときには、ティッシュに精油を1滴垂らして枕元に置くだけでも、そっと気分を支えてくれます。逆に、過覚醒で緊張が抜けないときには、穏やかに神経系へ働きかける香りが、からだとこころをゆるめる助けになります。

初めて使う方には、まずラベンダーなどのベーシックな精油がおすすめです。解離傾向が出やすい方にはペパーミントやレモンなどのシャープな香りが、グラウンディングにはヒノキやスギといった樹木系の香りが良いとする報告もあります。また、「今の自分に必要な香りは、心地よい香りとして感じられる」という考え方もあります。安全な範囲で、からだの感覚や好みに耳を澄ませながら選んでみてください。

精油はブランドやメーカーによって香りの印象が大きく異なります。調子の良いときに店頭でいくつか嗅ぎ比べ、自分が「ほっとする」と感じるものを選ぶとよいでしょう。生活のリズムに合わせて、無理のない形で、日常に取り入れてみてください。

ブランドはお好みで構いませんが、身近で手に入りやすいものとしては、生活の木ニールズヤード、などがあります。個人的には、ブレンドオイルではnahrinのハーブオイル33+7 、シングルオイルではFragrant Earthのイランイラン、ラベンダー、ジャスミン、カモミールなど、こだわりのあるパワフルな香りが気に入っています。

フィンランドのFrantsilaから出ている「土管の親父」というアロマ配合ボディローションは、18世紀の「森のセラピスト」のレシピをもとにしていると言われ、湿布のような香りでありながら、からだがしっかりと癒やされていく感覚があります。

なお、妊娠中の方や持病のある方は、使用前に必ず主治医にご相談ください。

ここから先は、関心のある専門家・支援者の方向けの内容です。


Deep Brain Reorienting(DBR)と解離について

DBRでは、「解離」を脳幹を中心とした、より深いレベルの脳の働きとして理解します。

ポイントは、ショックやトラウマによって脳が「過剰につながる」状態になることです。fMRI研究では、解離性亜型PTSDの人では脳の多くの領域にわたって「ハイパーコネクティビティ(過剰な結合)」が見られます。これは、予測不能な外界に適応するために、多様な防衛反応が総動員されている状態だと解釈されています。その結果として、かえって現実から切り離されたような体験、つまり「解離」が生じるという考え方です。DBRでは、このような過剰なつながりを駆動している「エンジン」は、大脳皮質(脳の表面)ではなく、その下にある脳幹に位置していると捉えます。

解離のタイプ

上丘(Superior colliculus)で起きる「そらす」解離: 危険やつらさに直面したとき、人は無意識に「見ないようにする」「そらす」行動をとります。上丘はこの“向きを変える”反応の中枢で、現実からの一時的な切断(解離)の入り口になりえます。

青斑核(Locus coeruleus)で起きる“皮質内解離”: 強いショックでノルアドレナリンが脳に一気に広がると、脳の“まとまり”が乱れて、現実感が薄れる/自分が自分でない感じになる(現実感消失・離人症状)などが起きます。また、空間や時間の感じ方も変わることがあります。 ​⁠


中脳水道周囲灰白質(Periaqueductal gray, PAG)を含む脳幹ネットワークで起きる「薬物キャッピング(neurochemical capping)的解離」: 反応が極端に強いとき、体は内因性カンナビノイドや内因性オピオイドなど“痛みを緩める物質”を出します。すると、つらさは和らぐ一方で、眠気・ぼんやり・温かさ・めまいのような「ふわっと切り離された感じ」が出ることがあります。 ​⁠このDBRでいう「薬物キャッピング(neurochemical capping)」は、ショックや強烈なディスコネクション・ペインがあまりに強すぎるときに、脳幹レベルの反応を“薬物的に蓋をして”しまう現象を指しています。

愛着断絶の痛みが、幼少期などであまりに強烈・反復的だと、脳は「これ以上感じたら死ぬ」と判断して、強いストレスホルモンや内因性オピオイドなどを大量動員し、痛みと情動の回路に薬物的な鎮静をかけてしまいます

DBRでいう薬物キャッピングは、このような「内因性の薬理学的スイッチによって、ショックと痛みのシーケンスが途中でカットされ、体験そのものはどこかに保持されているものの、日常意識からは切り離されてアクセスしにくくなっている状態」を指します。


臨床的には、『わかっているし思い出せるが、何も感じない/自分ごとではない』という訴えや、慢性的な離人感・麻痺感、フリーズ優位の防衛が続くケースを、DBRでは薬物キャッピングの結果生じた状態として理解します。そしてこのキャッピングが形成されたショックと痛みのシーケンスに、安全に立ち会い直すことが、治療同盟と介入の中心課題になります


「薬物キャッピングされたショックと痛み」の層には、トップダウンの再評価や意味づけではアクセスできないため、脳幹のシーケンスに沿って身体レベルでゆっくり再起動させることで、

  • 内因性オピオイドなどによる“凍結+無感覚”防衛が少しずつ弱まり
  • 感情・身体感覚・関係欲求へのアクセスが回復し
  • 構造的解離に伴うシャットダウンパターンが緩む

という変化が期待されます(Corrigan & Christie-Sands, 2020; Kearney et al., 2023)



「構造的解離」のイメージとつながり 

DBRの枠組みでは、DIDに見られるパーツ間の切断は、主に皮質レベルの回路の分断として理解されます。一方で、恐怖・怒り・悲嘆・羞恥といった強い情動は、脳幹レベルの防衛システムに根ざした“情動核”として残存し、皮質レベルのパーツと十分に統合されないまま、それぞれが別々に作動している、というイメージです。


Corrigan F, Young H, Christie-Sands J. Deep Brain Reorienting: Understanding the Neuroscience of Trauma, Attachment Wounding, and DBR Psychotherapy. Routledge; 2024. doi:10.4324/9781003431695. 

「紹介サイト: Deep Brain Reorienting 公式 ↗

上記コリガン博士の著書と公式サイトより翻訳し要約


DBRの特徴

中脳水道周囲灰白質(PAG)

従来のポリヴェーガル理論と用語の類似はあるものの、DBRモデルは迷走神経ではなくPAGに中心を置く点で異なります。つまり、交感神経優位に伴う「怒り・恐れ→闘争・逃走」、副交感神経優位に伴う「凍りつき・麻痺・服従」)が中脳水道周囲灰白質(PAG)で生成されることが強調されています。​⁠
 

再トラウマ化を防ぐ構造化された治療

脳幹の三つの構造

上丘(superior colliculus:定位反射)、
青斑核(locus coeruleus:ショック反応の開始)、
中脳水道周囲灰白質(periaqueductal gray:情動と防衛反応の生成)​⁠に注目し、治療が構造化されています。
 
 
上丘の機能:
新しい刺激への極めて素早い「定位」は頭部・眼球の向きの変化—を引き起こします。外的刺激だけではなく、記憶・イメージ・思考などの内的内容にも定位緊張は生じ得ます。これはDBRの過程で後頭基部・額・眼周囲の筋緊張として知覚されます。 ​⁠


青斑核の役割:
突然のショックに伴うノルアドレナリン系の全身性賦活は、人それぞれですが、例えば、寒気や震え、胸をスッと何が通り過ぎるような感覚、胃の沈む感じ、腕の力が抜ける感覚、指先が冷たく感じるなど、一次的で拡散的な身体感覚として現れます(言語習得以前の根源的な孤独の痛み/心の痛みに関するショックは、また別のもう少し長引く独特の感覚として現れることがあります)。
 
中脳水道周囲灰白質(PAG):情動・防衛反応の生成装置です。背側(dorsal)は能動的防衛(闘争・逃走・高覚醒フリーズ)、腹側(ventral)は受動的防衛(服従・崩壊的不動)。両者の共活性化により従順・服従から「緊張性不動(tonic immobility)」まで連続的に生じることがあります。


 

  • 内的刺激(トラウマ記憶・イメージ・思考・夢)も上丘での定位を誘発し、即時の定位緊張が生起するため、身体基盤のトラウマ療法ではこの緊張の微細な変化を手がかりとして処理を進めます。 ​⁠
  • ショック反応は自律神経の持続的反応に先行して、PAGで情動・防衛へと変換されるため、介入のタイミングと階層(定位→ショック→防衛)の理解が重要となります。 ​⁠


Corrigan F, Young H, Christie-Sands J. Deep Brain Reorienting: Understanding the Neuroscience of Trauma, Attachment Wounding, and DBR Psychotherapy. Routledge; 2024. doi:10.4324/9781003431695.「紹介サイト: Deep Brain Reorienting 公式 ↗」より抜粋、要約、翻訳。